いよいよ開幕を迎えたシーズン最初のテニス四大大会「全豪オープン」(1月14日〜28日/オーストラリア・メルボルン/ハードコート)。現地1月14日には男子シングルス1回戦が行なわれ、センターコートのナイトセッション第1試合に大会11度目の優勝を狙う世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が登場。18歳で予選勝者のディノ・プリズミッチ(クロアチア/187位)に大苦戦を強いられるも6-2、6-7(5)、6-3、6-4で勝利し、ヒヤヒヤのスタートを切った。

 パリ五輪が開催される今季は、男子選手史上初の「年間ゴールデンスラム」(1年で全四大大会と五輪を制覇すること)に期待が寄せられているジョコビッチ。それにはまず今回の全豪での大会連覇が必須となるだけに、プレッシャーも相当のはずだ。それでもこの日は四大大会本戦初出場を果たしたプリズミッチを相手に序盤から得意のバックハンドを軸とした攻撃的なテニスで主導権を掌握。幸先よく第1セットを奪取する。

 ところが第2セットに入ってからはプリズミッチの驚異的な粘りに悪戦苦闘。全くミスをしてくれないプリズミッチにストローク戦で打ち負ける場面が目立ち、フォアハンドのエラーも重なったことで先にブレークを献上。何とかブレークバックに成功してタイブレークに持ち込むも、会場のファンの声援を味方につけながら躍動感あふれるプレーを続けるプリズミッチにミニブレーク数で上回られ、セットオールとされる。

 サービスゲームでも安定感を欠いたジョコビッチは、第3セットに入っても流れを引き戻すことができない。第3ゲームからは3ゲーム連取を許し、ピンチに追い込まれていくジョコビッチ。それでも絶対王者は崩れなかった。調子が悪かったフォアハンドもしっかりと修正。疲労の色が見え始める相手をじわりじわり揺さぶりながらポイントを重ね、第6ゲームからは立て続けに4ゲームを奪って勝利に王手を掛ける。
  迎えた第4セットはゲームカウント4-0と先行したところから反撃を食らうも、何とかリードを守り切って勝負あり。4時間1分の死闘をものにし、2回戦進出を決めた。

 試合後のオンコートインタビュー直前にジョコビッチは、大健闘を称える形でプリズミッチに拍手。記者会見でも最後まで懸命に戦い抜いた18歳の新鋭に心からの賛辞を送った。

「信じられないほどの相手だった。18歳にしては非常に成熟しているし、自信を持ってプレーしていて、第4セットも僕が4-0とリードしたところから諦めずに立ち向かってきた。彼のメンタリティや試合へのアプローチ、彼のゲームに感銘を受けた。彼の規律的な取り組みや日々のルーティンへの献身が彼を肉体的に強くし、18歳で成功したという前向きな話をたくさん聞いていた。彼には素晴らしいキャリアが待っているのは間違いない」

 さらにジョコビッチは、プリズミッチのディフェンス力を自分に見立てつつ「鏡の中の自分と対戦しているような感覚だった」と称賛。「彼は特にバック側で信じられないほどのディフェンス力を持っているし、非常に完璧なゲームをする。彼の全てのショットには改善の余地があるが、18歳にしてはメンタルも体格もしっかりしている」と続けた。

 何とか初戦を乗り越えたジョコビッチは、2回戦でアレクセイ・ポピリン(オーストラリア/43位)とマルク・ポルマンズ(オーストラリア/154位)のどちらかと対戦する。次戦もどんなプレーを見せてくれるのか注目したい。

文●中村光佑

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